毎週末、サイエンス(特に生命科学あたり)にまつわるニュースを3本にしぼって簡単に紹介するコーナーです。今週は、深海魚の目撃と地震前兆の関係、新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)臨床試験の最新の状況、ドラマ『僕たちの勇気 未満都市』に登場する微生物「T幕原型」の3本です。

深海魚の目撃と地震前兆の関係

深海魚と地震は無関係 東海大検証、場所一致わずか – 日本経済新聞

東海大学などのチームによると、1992年から2011年までにあった深海魚目撃101件と地震161件の関係を調べたところ、深海魚目撃から30日以内に地震があったのはわずか8%。ということで地震との関係はないという判断に至ったようです。

ただ、それっぽいキーワードでGoogle Scalarで検索しても論文は出てこないし、他の記事を見ても学会発表でもなさそうなので、どうにかして詳しく読みたいところ。

新しい出生前遺伝学的検査(NIPT)臨床試験の最新の状況

新出生前診断、4年で4万人超 高齢出産増加が背景 – 日本経済新聞

母親の血液から胎児の染色体(今は13番、18番、21番)を調べる方法。正式名称は無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT: Noninvasive prenatal genetic testing)。現在は臨床研究という位置付けで、遺伝カウンセリングの意義も含めてデータを集めているところです。大体1年で1万人以上が受けている計算になります。4年間もやってきたので、記事にもあるようにそろそろ結論を出す段階に来ているようです。

なお、臨床研究という性質上、指定された医療機関でしか受けられないのですが、指定されていない病院がネット広告を出し、しかも遺伝カウンセリングなしで簡単に検査できる、などをアピールする状況が発生しています。一番不利益を被るのは妊婦なのでやめてほしいです。

無認可施設で検査が実施されている現状を踏まえ – NIPTコンソーシアム

ドラマ『僕たちの勇気 未満都市』に登場する微生物T幕原型

金曜ロードSHOW!特別ドラマ企画「ぼくらの勇気 未満都市2017」|日本テレビ

1997年の連続ドラマで、落ちた隕石に付着していた微生物「T幕原型」によって大人が全員死亡し、子どもだけが住む封鎖地区の物語。無法地帯でのサバイバルものですが、終盤は真実を隠蔽しようと武力行使に出る日本政府との戦いが描かれるというXファイルもびっくりの陰謀論的展開が個人的にツボでした。

Huluで配信していたので一気見していたら、T幕原型で大人だけが死ぬ理由としてテロメアが指摘されていました。テロメアとは、DNAを含む染色体の末端領域のことで、細胞分裂のときに原理上どうしても複製できずにだんだん短くなっていくという特徴があります。細胞分裂をカウントしていると見なすことができ、ある短さになると細胞分裂ができなくなります(逆にがん細胞はテロメアを長くする能力があるので無限に増殖できます)。

劇中では、テロメアが一定以下の長さになるとT幕原型に対する何らかの抵抗性が失われて死に至る、それが20歳ごろという報告がありました。実際には体中のあちこちの細胞でテロメアの長さは違うはずだから、厳密に20歳を測るのは難しいと思うけど、20年前にこういう設定を取り込んでいるのは単純におもしろいです。

ただ、後半になって、寒さに弱い変異体が広まって……というのは納得できません。作中では秋から冬にかけてだんだん寒くなる時期なので、変異しやすいならむしろ寒さに抵抗性をもつ変異が広まっていくはずです。最初から寒さに弱いとも考えましたが、耐寒実験は最初にやったと研究者の発言もあったし、うーん……。

そもそも人間は恒温動物なのであまり寒さの影響は受けないと思うのですが、もし皮膚にだけ生息するなら寒さの影響は受けるだろうし、皮膚感染する、死の直前に手が冷たくなるという特徴もそれなりに通じます。本当はもうちょっと考察したいけど終盤に明らかになる真実と関係(ネタバレ)するのでこの辺で。

ちなみに、劇中では光学顕微鏡でT幕原型が染色された写真が何回も写っていました。現在の公式サイトのあらすじでは「T幕原型ウイルス」となっていますが、ウイルスは光学顕微鏡では見えないのでウイルスでないのは確かです。ただ20年前のドラマでは一貫して「微生物」と呼んでいたので後付けかも。PVにあるように「殺人ウイルス」のほうが響きがいいのはわかるのですが。

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