週末はセンター試験が開催されました。生物系のサイエンスライターだし、せっかくなので生物科目の問題を解いてみることにしました。果たしてサイエンスライターと名乗るにふさわしい点数を獲得することができるのか!?(5年連続使っている文章のコピペ)

文系学部向けの「生物基礎」と理系学部向けの「生物」

問題と解答は予備校各社のサイトにあります。お好きなところをどうぞ。

河合塾: 2017年大学入試センター試験速報

東進:センター試験2017|解答速報2017

駿台:2017年度大学入試センター試験自己採点集計データネット

代々木ゼミナール:大学入試センター試験速報

理科科目は「理科①」と「理科②」に分かれています。「理科①」は文系学部向けの科目で、「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」から2科目を選び60分で回答します。1科目あたり50点満点です。

もう一つの「理科②」は理系学部向けで、「物理」「化学」「生物」「地学」から2科目を選び120分で回答するパターンがほとんどです。こちらは1科目あたり100点満点です。

このブログでは以上のことを踏まえて、「生物基礎」を30分、「生物」を60分で回答します。なお、今回は諸事情により「生物基礎」の教科書を完璧に読み込んでおり、「生物」の教科書もざっと目を通しています。

教科書をしっかり読んでおけば解ける「生物基礎」

「生物基礎」は50点中50点の満点でした。生涯現役!

ただ今年は、教科書に載っている用語の中でも重要なものばかり出題されたので、難易度はあまり高くない印象を受けました。受験生が苦手かな、という問題を2つだけ解説します。問題文を要約してあるので皆さんも考えてみてください。

第1問、問5
細胞分裂が盛んなタマネギの細胞を顕微鏡で観察したところ、間期の細胞が168個、分裂期の細胞が42個であった。間期が20時間だとすると、細胞周期全体の長さと分裂期の長さは何時間になるか。

→間期の細胞と分裂期の細胞の比は168 : 42 = 4 : 1。細胞の数イコールそのステージにかかる時間といえるので、間期が20時間なら分裂期はその4分の1の5時間。細胞周期全体の長さは20 + 5 = 25時間。

第2問、問5
免疫の一次応答と二次応答の正しいグラフを選ぶ問題。最初の感染日を0日目、2回目の感染を矢印とすると、正しいのはどれか。

(生物基礎の問題32ページより)

→ポイントは、2回目のほうが抗体の産生量が多く、かつ産出までにかかる時間が短いこと。1と3で迷いそうだけど、1は一次応答まで8日程度だけど二次応答まで15日以上かかっているのが間違い。答えは3です。

他の問題も、ほとんどは教科書に載っています。第2問、問3のホルモンや、第3問、問1と問2のバイオームの分布は毎年出ているのでしっかりおさえましょう。

ちなみに、第2問、問4の抗体産生も含めた血液関係は『はたらく細胞』をおすすめします。細かいところで気になる表現がある漫画ですが、「生物基礎」を受験するくらいなら支障ありません。

実験の考察問題がくせ者だらけの「生物」

「生物基礎」とは打って変わって、癖のある「生物」です。こちらは100点満点で91点と、ほぼ全盛期に近い点数でした。生涯現役!

教科書の用語をおさえておくのは「生物基礎」と変わらないのですが、実験の考察問題でかなり時間をとられてしまい、焦りを感じる受験生が多かったと想像します。こちらは3問を解説だけしますので、興味のある方はぜひ問題を解いてみてください。

第2問、問2
水晶体の誘導問題で、水晶体ができない変異体マウスXと野生型のマウスWの細胞培養実験。決め手となるのは実験2の「野生胚Wの眼杯と変異体胚Xの予定水晶体領域をいっしょに培養したら水晶体に分化した」こと。このことから、変異体胚Xの予定水晶体領域は水晶体に分化する能力そのものはもっており、変異体胚Xで水晶体ができない理由は眼杯からの誘導に原因があるのでは、と推測できます。よって正解は1。

第2問、問3
実験3で「水晶体は形成されなかった」けれども「眼胞が形成され、眼杯になった後に網膜へ分化した」とあるので、選択肢の中で素直に書いてある2が正解。1と3はそもそもそんな実験をしていないので考察できない、4は「網膜は~眼杯の形成を誘導する」の文章が明らかにおかしい。

第2問、問5
植物の重複受精が絡んだ遺伝子型の問題でかなりの難問。まず、胚乳は「雌親由来の中央細胞2nと雄親由来の精細胞nが融合した3n」を知っていないとどうしようもないです。中央細胞と精細胞の間に/を入れて書くと、交配1の胚乳はWW/wになります。同じように交配2の胚乳はww/W。
やっかいなのは、交配3と4で出てくるF1個体。F1個体は交配1から作った胚なのでWwであり、交配3の胚乳はww/Wとww/wです。さらにやっかいなのは交配4で、雌親がF1個体であること。F1個体はWwですが、そこから胚のう細胞が作られるときに減数分裂するので、胚のうの中にある8nはすべてW、もしくはすべてwです。つまり、中央細胞はWWかwwの組み合わせしかないので、交配4の胚乳はWW/wとww/wとなります。
そこで選択肢を見ると、交配2と交配3でww/Wが同じなので3が正解です。5だと交配3はww/Wですが交配4はWW/wでWの数が違います。

あと、個人的にはバッタに寄生してバッタを操るハリガネムシの実験や生態系の観察が面白かったです。バッタを操るってどういうこと?という方は「バッタ ハリガネムシ」で画像検索してください。けっこうすごいです。こういうのがいるから生物は面白いんだよねえ。

文系と理系で求めているものが違うかもしれない

新課程になって3回目のセンター試験ですが、大体の傾向が見えてきました。少なくとも「生物基礎」と「生物」については、文系と理系とで求められているものが違うのではないか、と考えられます。

文系は生物学の基礎的な知識をおさえてほしい。
理系は基礎をおさえた上で、生物学の実験結果から考察できる能力をもってほしい。

個人的には生物の面白さを感じてほしいところですが、受験生は現実問題として試験対策をしないといけないので、アドバイスするなら次のようになります。

「生物基礎」は教科書を確実におさえておくこと。そうすれば満点も不可能ではありません。

「生物」は、教科書の内容にプラスして、実験の考察問題に慣れておくこと。例えば、新聞やテレビで何かの研究成果を報道しているときでも、「こういうことは今回の実験から考察できるけど、これは他の実験をしないと断言できないんだな」と区別して読み解くくらいの習慣を付けるとよいです。

あと、新課程ではDNAやゲノム、それらに由来する多様性が重視されています。最近の高校生はどんなことを勉強しているんだろう、と気になった方には、僕が編集協力したこの本をおすすめします(宣伝)。

あとあと、グラフを読み解く問題もよく出てきますが、くれぐれも縦軸には注意しましょう。スケールが違うときには何か意図があるかもしれない、と疑う癖を付けてください。受験生に限らず、悪質なグラフを見抜く方法はこの本の1章に書いてあります。