腸内細菌がさまざまな病気や体質に関わっていることが明らかになりつつありますが、1000種類、1000兆個にもおよぶ腸内細菌はそう簡単に調べることはできませんでした。しかし最近では、DNA解析によって腸内細菌を丸ごと調べることができるようになってきました。そして国内初の丸ごと腸内細菌解析サービス「Mykinso(マイキンソー)」が登場し、サンプルを郵送したのが11月上旬。その結果を紹介しながら、このサービスの特徴を考えます。

採便してから5週間後に結果

マイキンソーは「サイキンソー」という理化学研究所認定のベンチャー企業のサービスです。サンプルを採取(採便)したのが11月3日で、解析完了のメールを受け取ったのが12月12日。約5週間かかりました。他にサービスを受けた方のなかには2週間だったというブログもあるので、おそらく一定数のサンプルが集まるか、一定期間ごとに区切ってまとめて解析していると思われます。

マイキンソーでわかること

マイキンソーでわかることについて順番に見ていきましょう。

  • 腸内細菌のタイプ

腸内細菌の種類と比率によって3タイプに分類できるようです。僕はB型で、バクテロイデス属の細菌が多いとのこと。バクテロイデス属の細菌が作る物質のなかには、免疫の応答や炎症反応の制御に関わっているとする研究成果もあります。

腸内細菌学雑誌Vol. 27 (2013) No. 4 p. 203-209 バクテロイデスと免疫

アメリカ人や中国人に多く、日本人ではあまりいないタイプとのこと。「低炭水化物・高脂肪・高タンパク質の食事の傾向がある」といわれているようです。確かに僕の普段の晩ごはんは0.5合の白米におかずが多めなので、当たっているのかもしれません。

  • 太りやすさ

ファーミキューテス門とバクテロイデーテス門の比率が肥満度と相関する報告が世界中であるとのこと。僕の場合は平均値よりやや低めで「やや太りにくい」とのこと。BMI16.3の僕にとっては文句なしでしょう。

ちなみにここでいう「平均」とは、日本人全体ではなく、マイキンソーのサービス利用者の平均だということに注意してください。健康意識の高い人という偏りの可能性は否定できません。

  • 腸内細菌の多様性

多様性が高いほど病気になりにくいという研究成果があるとのことですが、具体的に何の病気なのか、この画面からではわかりません。調べたところ、多様性が低いと肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症、炎症が多く見られたとする報告がありました。

Nature ハイライト:健康は本当のところ、腸の問題

病気とは何なのか、もっと具体的に示すべきでしょう。

有用物質を作る菌の割合

ここからは個別の菌の割合になります。

  • ビフィズス菌の割合

腸内の環境をよく整えるビフィズス菌。僕は平均より2倍近い割合のビフィズス菌があるとのこと。やった!

  • 乳酸産生菌の割合

乳酸を作る菌、いわゆる乳酸菌の割合です。平均より少し低めかな、といったところ。

  • 酪酸産生菌の割合

腸管内の細胞のエネルギー源となる酪酸を作る菌の割合。平均の半分以下と、少し気になる数値。「酪酸が特定の疾患のリスクを低減する可能性がある」とありますが、何の疾患なのかまったくわかりません。調べたところ、潰瘍性大腸炎の患者の腸内では酪酸を作る腸内細菌が少ないこと、マウスに酪酸を与えると大腸炎の症状がよくなる研究成果が見つかりました。

腸内細菌が作る酪酸が制御性T細胞への分化誘導のカギ | 理化学研究所 

腸内細菌の多様性でも述べましたが、具体的にどの疾患に効果があるのか明記するのが親切でしょう。

  • エクオール産生菌の割合

大豆に含まれている大豆イソフラボンから、エクオールという物質を作る菌の割合。エクオールは更年期障害の改善効果があるとのことですが、僕は初耳でした。こちらも調べたところ、尿にエクオールがどれくらい含まれているかの解析サービスを提供している名古屋大学認定のベンチャー企業を見つけました。

尿中エクオール検査『ソイチェック』 – 株式会社ヘルスケアシステムズ

エクオールの量を調べるだけなら4104円とのこと。

  • 腸内細菌の組成

最後に、腸内細菌の大まかな割合がわかります。

赤:腸内免疫に影響を与えるバクテロイデーテス門

緑:乳酸菌などが含まれるファーミキューテス門

黄色:ビフィズス菌が属するアクチノバクテリア門

青:大腸菌やカンピロバクターなどが含まれるプロテオバクテリア門

紫:その他

ざっくりすぎて、これだけ表示されてもどうしたものか、というのが率直な感想です。

現在は情報不足、バージョンアップに期待か

腸内細菌全体のようすや、一部の菌の割合を知ることができるので、単純におもしろいというところがあります。結果の画面を見ていると、お腹のなかから「かもすぞー」という声がいっぱい聞こえたような気がしました。

しかし、どの菌がどのような役目を果たしているのか、その菌を増やす(あるいは減らす)ためにはどうすればいいのかという点については、情報不足という感が否めません。この点については遺伝子解析サービスよりも劣っていると言わざるをえません。

腸内細菌は、わたしたちの体全体に大きく影響を与え、個人差も大きいことから、「もうひとつの臓器」「第二のゲノム」と表現する研究者もおり、学術的にも一般的にも注目されているテーマです。サービス利用者が料金を払い、研究者はサンプルを入手することでスムーズに研究できるので、利用者への情報提供(リターン)が重要な意味をもちます。サービスそのものは非常におもしろいのですが、リターンのところがまだ弱いという印象です。

ただ、まだスタートアップの段階なので多めに見ましょうという懐の深い精神をわたしたちがもつのも重要です。初回はクラウドファウンディング形式で資金を調達した以上、利用者の声を聞く義務があるはずなので、もっとこうしたらいいのに、という意見をぶつけていきましょう。

解析完了メールのなかには、2016年前半には、約60ページの腸活アイデアブックの発送、より詳しいレベルの解析をするとありました。気になる方は、これらのバージョンアップの後で試してみてもいいのかもしれません。

遺伝子解析サービスに関することはmy genomeタグにまとめてあります。ぜひご覧ください。

 

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