今日から毎週末、サイエンス(特に生命科学あたり)にまつわるニュースを3本にしぼって簡単に紹介するコーナーを始めます。今週は、無届けで細胞移植を実施したクリニックに対する学会の声明、カップル遺伝子検査の現状について、遺伝子解析サービス事業者の子会社化です。

無届けで細胞移植を実施したクリニックに対する学会の声明

日本再生医療学会より、国民の皆様へのお知らせとお願い – 市民のみなさまへ | 日本再生医療学会

6月28日、無届けで臍帯血由来の細胞を患者に投与したクリニック11施設に対して、厚生労働省が法律違反として再生医療などの提供の一次停止を命じました。それを受けて週末にウェブサイトに記載、火曜日に記者会見を開きました。

現在、他人の細胞を移植することは、安全性や有効性が十分に確認されていないという高いリスクがあります。こうした新しい治療法の確立には、臨床試験を経て安全性や有効性を検証しなければいけません。しかし、それを飛ばしていては、患者に危険が及ぶ可能性があるということです。海外では、自分の脂肪細胞由来の幹細胞を眼球に注入して失明したという例があります。

K. Pandya et al. Vision Loss after Intravitreal Injection of Autologous “Stem Cells” for AMD. NEJM 376: 1047−1063 (2017)

こうした新規の治療法がお金がかかる(と思わせることができる)ため、言い方を変えれば個人経営のクリニックにとっては旨味になってしまいます。再生医療に限らず、科学を装ってうさんくさい行為を行う医療機関をなんとか取り締まってほしいところ。

それにしても、日本再生医療学会のウェブサイトは生物の学会らしからぬビジュアル重視です。

夫婦遺伝子スクリーニング検査の現状について

「多項目非発症者保因者診断(夫婦遺伝子スクリーニング検査)」に関する報道、声明について|Genesis Healthcare

ジェネシスヘルスケアといえば、個人向けに遺伝子解析サービスを提供している古株です。

ここにある夫婦遺伝子スクリーニング検査(カップル遺伝子検査)とは、両親の遺伝情報を解析して、子どもに遺伝性疾患が現れる可能性があるか検査するものです。生まれてからの病気だけでなく、そもそも妊娠できるかの段階も見ることができます。4月には「日本人臨床研究を開始」と発表しているので、今取りかかろうとしている段階でしょう。

ジェネシスヘルスケア株式会社が米国GenePeeks, Inc社と業務提携。国内初となる「多項目非発症者保因者診断」=夫婦遺伝子スクリーニング検査を開始|ジェネシスヘルスケア株式会社のプレスリリース

おそらくですが、どの病院で実施するか、試験デザインをどうするかの検討中の段階です。それが何新聞かが早とちりして、一般向けにすぐスタートするのかと誤解が広まったため、このような声明を発表することになったと思われます。

やるとすれば、両親自身のことにも関係するので、遺伝カウンセリングなどのケアは必要でしょう。

遺伝子解析サービス事業者の子会社化

株式交換による株式会社ジーンクエストの完全子会社化に関する基本合意書締結のお知らせ|ユーグレナ

ユーグレナとは「ミドリムシ」のこと。この会社は、ミドリムシを使ってバイオ燃料や栄養素の高い食品の開発を目指しています。

一方ジーンクエストは、日本初の一般向け大規模遺伝子解析サービスを始めたスタートアップ企業。2年くらい前にIT企業のソフィアホールディングスの傘下になっていましたが、今度はユーグレナの完全子会社化になるとのこと。とはいえ、やることは変わらず、ユーザーを集めて研究機関と共同研究するというデータビジネスを続けるでしょう。

ところで「ユーグレナ」でGoogle検索すると、トップに広告として公式通販サイトの化粧品が表示されるのですが、これは本当に効果があるんでしょうか。半分以上の画像に「※イメージ」とあってすごく気になるのですが。

 

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