• HOME
  • life science
  • センター試験に代わる新・大学入学共通テストの生物科目で求められるのは考察力

センター試験に代わる新・大学入学共通テストの生物科目で求められるのは考察力

life science

現在の大学入試センター試験は2020年の実施が最後となり、2021年から「大学入学共通テスト(仮)」が新たに登場します。国語や数学の一部で記述式問題があると話題になっていますが、生物科目ではどうでしょうか。プレテストが公開されたので分析します。

プレテストは理系選択の生物のみ

問題と正解はこちらにあります。

平成29年度試行調査 問題、正解表、解答用紙等|大学入試センター

生物は、いわゆる文系が受験する「生物基礎」と、理系が受験する「生物」の2種類があるのですが、今回は理系選択の「生物」のみです。回答時間は60分で100点満点ですが、配点までは決まっていません。全問マークシート方式で、他の理科科目も含めて記述式はありません。

基礎的知識をもっている前提の考察問題がほとんど

従来のセンター試験では、前半は基礎的知識を問い、後半で実験結果を考察するというスタイルですが、新テストでは基礎的知識をもっている前提でほとんどが何らかの考察問題でした。

例えば第2問Bは、対話で空白を埋めるという問題です。

「被子植物の花では、A、BおよびCの三つのクラスの遺伝子のはたらきで、がく、花弁、おしべ、めしべの4つの花器官が、それぞれ領域1、2、3、4に形成される」という花器官形成のABCモデルを習ったカズさんとハナさんは、身近にある植物の花を観察することにした。

カズ:授業で習ったABCモデルは本当に全ての植物に当てはまるのか疑問なんだ。

ハナ:どういうことかな。

カズ:ほら、例えば、そもそもチューリップには、がくがないようなんだ。さらに、花弁が3枚セットで二重になっているように見えるんだ。

ハナ:本当だね。でも、チューリップでは「   」と考えれば、ABC モデルで説明できないかな。

空白に入る文として最も適当なものはどれか。

1. A遺伝子が、領域3でもはたらいている
2. A遺伝子が、領域4でもはたらいている
3. B遺伝子が、領域1でもはたらいている
4. B遺伝子が、領域4でもはたらいている
5. C遺伝子が、領域1でもはたらいている
6. C遺伝子が、領域2でもはたらいている

ABCモデルは、がく、花弁、おしべ、めしべという4つのパーツを作るのに3つの遺伝子が関わっているというもので、新課程で初めて学ぶことになったものです(僕は大学2年で初めて知った)。ABCモデルを知っているという前提で、遺伝子がどう変異すればがくがなくなって花弁が二重になるかを考える問題です。この問題の答えは3で、正解率は49.8%でした。

他にも、ノックアウトマウスを作るために塩基配列に変異を入れる方法を考える5択問題(第2問1、正解率37.8%)、光合成速度の原因を特定するために必要な実験条件を考える5択問題(第3問1、正解率20.6%)もありました。また、仮説を検証できる実験デザインを問うもの(第3問5〜7)は○×方式で3問答えますが、正解率は11.5%。ランダムで答えても正解率は8分の1(12.5%)なので、理解できた生徒がほとんどいなかったと考えられます。

最も正解率が低かったのは第5問5で、地域ごとの対立遺伝子の頻度から、対立遺伝子の特徴や人類の移動を考察するもの。6択から2つ選ぶというもので、組み合わせは15通りなのでランダムに答えて正解率は6.7%。ところが実際の正解率は4.6%だったので、これもほとんどの生徒が理解できていなかったと思われます。

今のセンター試験でよく見かける「○○ホルモンにはどのような機能があるか」など、教科書の内容をそのまま答える問題は皆無でした。

ねらいは課題を把握・探求・解決する考察力

考察問題がほとんどとなった新テスト。資料には、素案ですが「作問のねらいとする主な『思考力・判断力・表現力』についてのイメージ」として、次の3つを挙げています。

・課題の把握
抽出・整理した情報について、それらの関係性や傾向を見いだすとともに、課題を設定することができる。
・課題の探求(追究)
見通しをもち、検証できる仮説を設定し、それを確かめるための観察・実験の計画を評価・選択・決定することができる。観察・実験等の結果を分析・解釈することができる。
・課題の解決
仮説の妥当性を検証したり、考察したりすることができる。全体を振り返って推論したり、次の課題を発見したり、新たな知識やモデル等を創造したりすることができる。

知識をもっていることを前提に、かなりの考察力を要求していることがうかがえます。また、今までの考察問題は「この実験の結果から考えられることはどれか」というものでしたが、新テストでは新たに「この仮説を検証することができる実験はどれか」という実験デザインを問うものが複数あり、上の3つを意識した問題作りが想像できます。

受験生だけでなく教師の意識も根本的に変える必要あり

今回は理系選択の生物だけであり、生物基礎がどうなるかわかりません。しかし、今までの暗記重視というイメージから脱却して、知識をもっていることを前提とした考察問題が増える可能性は十分にあります。

だとすると、この変革に教師が対応できるのかということが気がかりです。理系は2次試験対策があるので多少のアレンジでなんとかできるでしょうが、文系向けの授業は考察問題を意識した内容に作り替える必要があるように思います。そのあたりは文部科学省から通達があるはずですが、テストを受ける側だけでなく教える側の意識も根本的に変えることが求められそうです。