理研のSTAP調査中間報告からわかった4つのこと

life science

本記事の研究成果を掲載した論文はRETRACTION(撤回、取り下げ)になりましたが、今後の検証のためにも記事は残します。

STAP論文に多くの疑義があるなか、今日の午後2時から理研が調査の中間報告を行いました。説明がおよそ40分、その後の質疑応答がおよそ3時間30分という長丁場でした。概要は理研のウェブサイトに掲載されています。今回は、以前からこのぶろぐで指摘していたこと4つに絞って紹介します。

マウスの胎盤の写真が似ている?

画像は片瀬久美子さん(@kumikokatase)のご厚意で掲載させてもらっています。

このブログでも問題を取り上げるきっかけになった疑義です。これについては、当初はひとつの図でまとめる構想があったこと、最終的にふたつの図に分けで掲載する過程で消すのを失念した、と著者らが主張しているとのことです。以前にも、マウスの作製者である若山教授が「別角度から撮ったもの」と認めています。

写真の撮影日と、構想したころの時期に矛盾がなく、明確な悪意があるという証拠もないため、意図した「改ざん」にはあたらない、つまり研究不正であるとは認められませんでした。

電気泳動の画像は不正に加工されたもの?

Nature, 505, 641–647のFigure 1iを改変。

これについては、筆者が加工したことを認めたようです。レーン3にリンパ球からのサンプルを流したがバンドが薄かったため、別の実験で流したリンパ球の写真を持ってきたとのことです。

しかも、泳動時間が違うため、縦方向に長さを調整、さらにコントラストを変えて切り貼りしたと供述しています。ただし、供述通りの方法では完全に同じ図を作ることはできないようで、引き続き調査が必要としています。

STAP細胞の多能性を示す写真が、博士論文の別実験からの流用?

調査委員会には2月20日に、筆者らから修正の申し出があったことを明らかにしました。論文では脾臓の造血系細胞を酸性処理して作製したSTAP細胞としているが、画像は骨髄の造血系細胞を細いピペットを通して作製した多能性幹細胞である、という修正依頼でした。ただ、その画像が博士論文のものであるという申し出ではなかったということです。

調査委員会も、博士論文からの流用であると知ったのは3月9日、つまり告発サイトで表面化したときだそうです。事実が判明してからあまり日が経っておらず、あまり例を見ない事案のため、こちらも調査中としています。また、博士論文からの流用であると報告しなかったことが、調査委員会を騙す意図があったかどうかについても調べる必要があるとしています。

STAP細胞は実在するのか

調査報告とは本来は関係ないのですが、やはり質疑応答のなかでも多かったもの(そして研究不正とごっちゃになってしまっているもの)として、「STAP細胞は本当にできたのか?」ということです。的外れな質問から、ちゃんとこの記事のようないろいろな可能性を理解したうえでの質問など、いろいろありました。

これについては「第三者による検証を待つしかない」として、研究コミュニティに委ねる姿勢をとりました。

なお、一部報道で「論文公開後に理研のチームが再現に成功した」とありましたが、質疑応答では「Oct4のGFP蛍光を確認しただけで、多能性までは確認していない」ということでした。

多能性細胞で発現するOct4が発現するとGFPによって緑に光る細胞です。ただし「緑に光る→多能性がある」というわけでは必ずしもありません。多能性があることを証明するには、さまざまな組織に分化することを見なければいけません。

良くも悪くも「組織の対応」

中間発表を見た印象としては「良くも悪くも組織として対応している」というものでした。なるべく個人に不利益がないように配慮していることを感じ取ることができた一方で、どことなくあやふや感があったのも確かです。ただ、そもそもが中間発表であり、調査が終わらないままに何かを決めるというのもおかしな話なので、そこは仕方ないのかもしれません。

ただ、あまりにも論文に不備が多すぎるので、やはり論文は一度取り下げるべきでしょう。そして理研は、不備(論文だけでなく採用からも含めて)が起きた原因は何だったのか、そしてSTAP細胞と主張するものが本当は何だったのか、責任を持って調べるべきだと考えます。それが唯一の納得できる説明になるだろうし、今後も同じようなことを繰り返さないための対策にもつながります。

 

  • この記事についてもっと知るためのおすすめ図書