STAP細胞を巡る75日間

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本記事の研究成果を掲載した論文はRETRACTION(撤回、取り下げ)になりましたが、今後の検証のためにも記事は残します。

小保方ユニットリーダーは(おそらく精神的な面で)体調不良となり入院しています。あまり状況は好ましくありませんが、医師の管理下にあるということは、僕のブログのような雑音が届きにくい環境にあるのでしょう。

そのため、本人の人格に最大限配慮したかたちで、STAP細胞を巡る問題を引き続きお伝えしていきます。「人の噂も七十五日」と言いますが、ちょうど今日で最初の発表から75日経ちました。話も大きくなってきたため、この記事ではこれまでの流れを時系列で紹介します。

STAP細胞を巡る75日間

なお「140129」というのは「2014年1月29日」という意味です。

■140129:小保方ユニットリーダーがSTAP細胞を発表

すべての始まりです。理研による発表資料は「体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見」です。当初このような問題になろうとは誰も思わなかったでしょう。僕も研究成果について疑問点を述べましたが、これは好奇心のようなものであり、別に疑っていたわけではありません。

■140204:電気泳動の画像の不正疑惑が浮上

おそらく初めて疑義が持ち上がったのがこのとき。PubPeerという研究者同士が匿名で意見交換する海外のサイトで、電気泳動画像のレーン3だけ背景が暗いという指摘が登場します。

 

■140217:理研が調査委員会を設置

電気泳動の画像の不正疑惑のあと、胎盤画像の類似など、多くの疑義が持ち上がりました。実際には2月13日から予備調査が行われ、この日に本調査を開始します。この経緯は最終報告書に記載されています(なお調査委員会に用意された期間はおよそ150日であることも記載されています)。このあたりから、一般のニュースにも取り上げられるようになります。僕が週刊ポストから取材を受けたのもこの頃です。

■140305:理研がSTAP細胞作成の詳細プロトコルを公開

論文に多くの疑義があるなか、世界の研究者から再現できないという速報が相次ぎます。本来は論文の疑義と再現性は別問題なのですが、お互いが事態を深刻化させている状況になってきました。しかし公開されたプロトコルにはさらりと根底を揺るがす記述があり、研究者コミュニティからも不信感が生まれるようになります。

■140309:別実験である博士論文からの画像流用疑惑が浮上

STAP細胞がさまざまな種類の細胞に分化できる多能性を示す、論文でも核心となる画像が、博士論文の別実験の画像と酷似しているという指摘が出ます。これまでは擁護の立場をとっていた、共著者の若山教授(山梨大学)にとっても、先の詳細プロトコルの記述と合わせて、不信感を生み出す決定打となってしまいました。

 

■140314:理研の調査委員会が中間報告

ここでは、6つの疑義にのみ調査をしていること、そのうち2点(画像のブロックノイズと胎盤画像の酷似)については不正ではないと結論付けます。残り4点は調査継続となります。

■140401:理研の調査委員会が最終報告、2点の研究不正行為を認定

ここからが、前回の記事からの続きとなります。報告書や関係者声明などは、理研の「研究論文(STAP細胞)の疑義に関する調査報告について(その2)」にあります。当時の僕の実況ツイートはTwilogをご覧ください。この報告書では、電気泳動の画像を切り貼りしたことが「改ざん」、実験手法が異なる画像を掲載したことを「ねつ造」と判断しました。それぞれの画像は中間報告のときの記事をご覧ください。なお、実験手法における盗用疑惑や記載ミスについては、好ましい行為ではないものの、研究不正行為と認定できないとしています。

電気泳動の画像については、小保方ユニットリーダーは禁止事項であると知らなかったうえに真正データも存在すると主張するものの、他の研究者を錯覚させる危険のある行為であることから調査委員会は「改ざん」と判断。画像流用については、本人は実験条件を間違えて認識していたと主張するものの、論文の根底を成すデータでそのようなミスはありえないとして調査委員会は「ねつ造」と判断します。

また、本人からの不服申し立ては4月9日まで受け付けると、調査委員会は質疑応答で回答します。

■140407:理研がSTAP現象の検証計画を発表

論文(STAP細胞が胎盤にも分化することを示すほう)の共著者であり、ES細胞の研究で多くの実績がある丹羽プロジェクトリーダーを実施責任者として、およそ1年かけてSTAP現象を検証する計画を発表します。詳細は「STAP現象の検証の実施について」をご覧ください。およそ4カ月後に中間発表することも明記されています。

■140409:小保方ユニットリーダーが会見、研究不正行為認定に不服申し立て

公の場には約2カ月ぶりの登場。理研が論文内の2点について研究不正行為と認定したことに、弁護士を引き連れて不服申し立てを行います。不服申立書では、いずれも実行したのは事実だが、真正の実験データは存在するまたは単純なミスであり、研究不正には当たらないと主張。しかしそれらを裏付けるような明確な証拠などは出ず、理研の再調査の審査に提出すると言うに留まります。当時の僕の実況ツイートはTwilogをご覧ください。

一方で、STAP細胞の再現には200回以上成功していること、他の研究者も個別に再現に成功しているなどの言及もありました。しかし、これらは「STAP現象の有無」についてであり「研究不正の有無」についてではありません。本人は研究行為について不勉強であったことを認めてはいますが、ミスであり意図的な不正行為ではなかったと主張を続けています。

■140412:理研の調査委員会が不服申し立てに対する審査を開始

不服申し立てを受けて、調査委員会が再調査すべきかどうかを決める審査を開始。読売新聞の記事によると、審査には1ヶ月程度かかる見通しで、このあいだに小保方ユニットリーダーから新しい資料などが提出されるかが焦点になりそうです。

もし再調査すべきと判断した場合、理研の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」の第17条7項にある「調査委員会は、特段の事情がない限り再調査の開始後概ね50日以内に、当該調査結果を研究所に報告する」に則ることになります(原文は調査委員会の最終報告書より)。再調査する必要なしと判断した場合は、そのまま結論は覆らず、次に処罰をどうするかの委員会が開かれます。

■140414の週:笹井副センター長が会見か

小保方ユニットリーダーの実質の上司であり、論文の共著者でもある笹井副センター長の会見が予定されています。ここでは、具体的な指導方法、研究不正行為があったとされるデータに対する当時の議論、STAP細胞の有無の可能性について言及すると思われます。

この記事で本当に書きたかったこと

ざっとこれまでの流れを紹介しました。日付と文章、そしてそれぞれのリンク先を見ることで、いつ何が起きたのか、みなさんも把握できるかと思います(専門的な内容をすぐに理解できるかは別としておいて)。実験ノートとはこうあるべきものなのです。

 

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