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2014年ノーベル物理学賞 ~21世紀の世界を照らすLED~

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今年はノーベル物理学賞もやります(「書け」という圧力に屈しました)。今回の受賞者は赤﨑勇教授、天野浩教授、中村修二教授の3人。赤﨑教授と天野教授は日本国籍、中村教授はアメリカ国籍です。受賞理由は「for the invention of efficient blue light-emitting diodes which has enabled bright and energy-saving white light sources(明るく省エネな白色光源を実現させた、効率よい青色LEDの発明)」です。

光あれ!

まずは光の歴史を紹介します。

以降のイラストは全てノーベル賞公式サイトのプレスリリース(Popular Information)より。最初はオイルランプ、19世紀はエジソンが開発した白熱電球、20世紀は水銀灯または蛍光灯の時代でした。そして21世紀がLEDの時代とされています。右に進むにつれて明るくなり、さらに長寿命となります。

半導体で照らすLED

LEDとは、発光ダイオード(Light Emitting Diode)のこと。LEDの特徴は半導体を使うところです。

これがLEDの簡略化した構造です。LEDの構造は3層の半導体から成っています。hole(正孔)があるp層、electron(電子)があるn層、そして正孔と電子がぶつかって発光するactive layer(発光層)です。何色の光が出るかは、半導体の種類によって決まります。

光の三原色は赤・緑・青。この三色があればすべての色を表現できます。このうち、赤と緑の光は1970年代には作成できていました。残りの青色についても、窒化ガリウム(GaN)を使えばいいというところまではわかっていました。ところが高品質なGaNの結晶作成は非常に難しく、実用化には向かないだろうとも思われていました。

そのGaNを安定的に結晶化する方法を開発したのが赤﨑教授と、当時赤﨑教授の研究室のポスドクとして研究していた天野教授です。GaNを作る電気炉の温度が上がらないというトラブル中で実験したところ、逆にうまくGaNの結晶ができたのです[1]。

これが1986年の出来事。ところが実際には、GaNを開発するだけではうまくいきません。実はGaNはn層になりやすく、p層とセットで初めてできあがるLEDの実現にはあと一歩というところでした。

いつの間にかp層GaNができていた

一般には、金属などの不純物を混ぜるとp層になりやすくなります。2人もGaNに亜鉛を混ぜるといったことも試したのですが、どうにもうまくいきません。

ところがある日、亜鉛を混ぜたGaNを電子顕微鏡で観察したあとでLEDの実験をしたところ、明るい青色

を発することを発見しました。これは、亜鉛入りGaNがいつの間にかp層になっていることを意味します。なぜ突然、p層になってしまったのでしょうか。

実は、電子顕微鏡で観察するときに使う電子線そのものが、亜鉛入りGaNをp層に変化させていたことがわかりました[2]。ノーベル財団の資料には「By coincidence(偶然に)」とあるので、上記の電気炉トラブルも合わせて、彼らはいわゆるセレンディピティを持っていたのかもしれません。

n層とp層のGaNができたことにより、1992年に世界初の明るい青色LEDの開発に成功しました。以上の研究成果を報告する論文は、いずれも筆頭著者が天野教授です。下馬評では陣頭指揮をとった赤﨑教授が候補とされていましたが、実験を担当した天野教授(当時はポスドク)も受賞対象となったのは、実験屋としては有り難いことなのかもしれません。

一方の中村教授は、当時メーカーに勤務していて、2人とは異なる手法で青色LEDの開発に成功しました。さらに、亜鉛入りGaNが電子ビームでp層になる仕組みを追究し、より簡便に、より安価に製造する方法を開発しました[3]。今の日本で当たり前のようにLEDが使われているのは、この安価な製造法のおかげと言っていいでしょう。

21世紀の世界を照らすLED

LEDが従来の白熱電球や蛍光灯より優れているのは、まずは省エネです。白熱電球を触ると、かなりの熱さを感じます。これは、電気が光だけでなく、熱にもなっていることを意味します。つまり、無駄が生じているのです。しかしLED電球を触っても、ほとんど熱さは感じません。電気の多くが光になっており、変換効率が非常にいいのです(光への変換効率は白熱電球が4%に対し、LEDは50%近い)。ただし雪国の信号機では、従来の照明からの熱が着雪を防ぐ役割があるため、LED導入を見合わせているところもあります。

世界の電力の2割から3割が、照明のために使われていると言われています。世界の照明がLEDに変われば電力を節約することができ、発電のための地球資源の節約になります。

また、LEDは電力網が不十分なところでも照明をもたらすことができます。太陽電池パネルを設置すれば、大規模な電気インフラがなくても電気を利用できます。省エネなLEDであれば、太陽電池パネルで得られる電力程度でも夜を照らすことができる、ということです。ただし何でもかんでも照らせばいいというわけでないので、住民の希望と生活習慣のバランスを考えながら導入する必要はあるでしょう。

青色LEDは100年に一度の発明と言われていますが、まさに100年ぶりの照明革命です。すでに先進国では広く採用されており、途上国でも広がっていくでしょう。LEDは、21世紀の世界を照らす光とも言えるのです。

 

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参考文献

[1] H. Amano, N. Sawaki, I. Akasaki & Y. Toyoda, Appl. Phys. Lett. 48, 353 (1986).

[2] H. Amano, I. Akasaki, T. Kozawa, K. Hiramatsu, N. Sawaki, K. Ikeda & Y. Ishii, J. Lumin. 40 &41, 121 (1988).

[3] S. Nakamura, N. Iwasa, M. Senoh, & T. Mukai, Jpn. J. Appl. Phys. 31, 1258 (1992); S. Nakamura, T. Mukai, M. Senoh & N. Iwasa, Jpn. J. Appl. Phys. 31, L139 (1992).