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STAP現象の検証実験を打ち切り 誰も多能性を示せなかった

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本日、理化学研究所(理研)は会見を開き、4月から進めていたSTAP現象の検証実験、および7月から11月にかけて実施されていた小保方研究員による再現実験の結果を公開しました。いずれも緑色蛍光陽性細胞は一部で認められたものの、多能性を実証できなかったとのことです。

検証実験の概要

何をもってSTAP細胞と呼ぶのか、再現に成功したとするのか、なぜかいろいろな見方があるのですが、そもそものSTAP細胞の定義が「Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells(刺激惹起性多能性獲得細胞)であることから、多能性(多くの種類の組織の細胞へ分化できること)は最低限の条件であるのは間違いありません。

検証実験では、多能性をもつ細胞で強く発現する遺伝子Oct3/4と、緑色蛍光タンパク質GFPを連結させた遺伝子(Oct3/4-GFP)をもつ細胞を使いました。GFPの緑色蛍光が見られればOct3/4が発現している、つまり多能性をもっている目印となります。ただし目印であって本当に多能性をもつとは限らない点には注意です。特に、細胞が死ぬときには緑色蛍光を発すること(自家蛍光)が知られているため、自家蛍光との区別は必須です。また、細胞への刺激には、論文に記載された塩酸処理だけでなく、出願された特許に記載されているATP溶液も用いました(ATP溶液も酸性)。

小保方研究員による再現実験

塩酸とATP処理合わせて48回行い、緑色蛍光を発する細胞塊は実際に247個観察されました。ただし、細胞塊の出現数は論文の記載より一桁低かったとのことです。247個のうち53個は、多能性を示す遺伝子の解析を行い、いくつかは多能性遺伝子(Oct3/4)の発現が見られたものの、その数は多くありませんでした。得られた緑色蛍光の細胞数が少なかったため、多能性遺伝子のマーカーとの対応づけ、自家蛍光との判別は再現性をもって検証できませんでした。

また、本当に多能性をもつかどうかは、マウスの受精卵に細胞を注入して、緑色蛍光を発するマウス(キメラマウス)が生まれるかで検証しました。論文では、酸処理で作製した細胞塊をガラス針などで分割してマウス受精卵に注入しています。今回も、得られた細胞塊を丸ごと、あるいは分割して注入して検証しました。細胞塊を注入した受精卵は1,615個、このうち受精卵が生存したのは845個でしたが、多能性を示す証拠は得られなかったようです(緑色蛍光が見られなかった?根拠は不明)。

ほか、テラトーマ形成も実験予定に組み込まれていましたが、実験に必要な細胞数が得られず、キメラマウスの実験結果から、相澤総括責任者の判断によって行わなかったとしています。

丹羽副チームリーダーによる検証実験

こちらは4月から行われている検証実験です。脾臓、肝臓、心臓由来の細胞を合わせて297回の塩酸またはATP処理を行い、こちらも細胞塊の出現が認められました。また肝臓の細胞をATP溶液処理して得られた細胞塊では、Oct3/4タンパク質の存在も確認できました。しかし、この細胞塊244個をマウス受精卵に注入したところ、117個の受精卵が生存したものの、緑色蛍光を発するものは0個でした。

また、STAP細胞に増殖性をもたせたSTAP幹細胞の樹立についても検証しました。細胞塊492個のうち3例で増殖性は見られたものの、細胞を取り出してさらに増殖させること(継代)はできず、STAP幹細胞は樹立でませんでした。

以上のことから、実験総括責任者である相澤チームリーダーはSTAP現象は確認できなかったとして、当初の検証期間の期限である2015年3月より早く、検証実験を終了するに至ったとしました。正確には12月18日付けをもって、すでに終了しています。

これに前後して、小保方研究員からは12月15日に退職願が出されており、理研はこれを受理、12月21日付けで退職することが決定していることが明らかになりました。

質疑応答

以後、質疑応答のなかからいくつか目立ったものを選びます(敬称略)。

Q「小保方研究員は4月の会見で、STAP細胞の作製に200回以上成功したと言っていたが、なぜ今回は成功しなかったのか」

相澤「何をもって成功としたのかわからないが、検証実験で緑色蛍光は一定の割合で確認できるので、これをもって200回以上再現したということは成り立つと思う。ただし、リプログラミング(細胞が多能性をもつこと)できたかは別だ」

Q「4月に、STAP細胞が存在しないと説明できない現象があると言っていたが」

丹羽「論文のデータを整合性をもって説明しようとすると、そういう現象があるというのは論理的な帰結。その帰結の根本となるデータを信じうるかどうかが、今回検証したこと。それが揺らいでいるため、整合性の説明は廃棄せざるを得ない」

Q「残されたサンプル(胎盤など)は調査するのか」

坪井(理事)「外部の調査委員会が調査しており、結果が出れば報告する」(いつになるかは承知していないとのこと)

Q「実験データは詳細に公開されるのか」

相澤「3月に科学的レポートとして提出したい」(論文として?詳細は不明)

Q「懲戒処分なら退職願は受理しないと思うが。また退職金はどうなるか」

坪井「体調などを考慮し、本人の意思を尊重した。懲戒委員会の処分は報告というかたちになる。任期制のため退職金はそもそもない」

Q「検証実験にpositive controlがない。できない条件で検証実験したと思われてしまうのでは」

相澤「もしES細胞をpositive controlとするなら、ES細胞からキメラマウスを作製できる条件でやっている」

Q「今後このようなことが起きるのを防ぐ手立てには何があるのか」

丹羽「今回は、私が参加する以前のデータを信じたが、それが問題だったのかもしれない。だからといって、共同研究者のデータを信じずに、自分で実験した結果だけで論文を出す状況が科学にとって望ましいか、わからない。こうすれば防ぐことができる、というのは自分でも言い切れない。基本的には科学者それぞれの良心とお互いの信頼の度合いに依存するしかないと思う」

Q「STAP細胞の可能性が少しでもあれば、実験を継続することも考えられると思うが」

相澤「検証実験としては終了する。(今後は)個々の研究者が個々の興味で行われるだろう」

Q「検証実験の当初の予算である1300万円のうち、いくら使ったのか」

坪井「当初の予定になかった小保方研究員の参加に伴う実験室の準備に550万円かかり、現在は1500万円かかっている」

会見終了後、一度退出した相澤チームリーダーは再び会見場に戻り「最後にひとつだけコメントしたい。小保方研究員の検証実験で、モニターを置いたり立会人を置いたりするのは科学のやり方ではない。科学のことは科学のやり方で処理しなければならない。このような検証実験をしたことについて、総括責任者として責任を感じている。今後何かあるたびに、このように犯罪人扱いで科学の行為を検証することは、科学にあってならない。このことについては、総括責任者としてお詫びを申し上げたい」と頭を下げました。

次は不正行為の調査

これで事実上、理研としてSTAP現象を検証することはなくなりました。理研に関係なく、幹細胞の研究者が自分の分野で取り組む可能性はありますが、論文として明確に示さない限り「STAP細胞はない」ということになります。再生医療などで使うにせよ、誰もがアクセスできて誰もが使えるようなものでなければいけないので「誰も存在を示せない=存在しない」ということです。

次のステップは、ほかに不正行為はあったのか、論文に掲載されたデータやサンプルは何だったのか、という調査委員会の調査結果です。一部のメディアでは1月から2月にかけて発表されるとしていますが、会見では外部の調査委員会のため理研でもスケジュールは把握できていないとしています。

質疑応答でも、再発防止策に何があるかは答えづらいような印象がありました。不正行為がどのように行われたのか、詳細が不明なのも一因でしょう。今後、同じ事態を引き起こさないためにも、過去に何が起きて、未来に向けて何ができるのかを、明確に示すことが必要でしょう。

 

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  • 参考Webサイト

STAP現象の検証結果について(理化学研究所)

理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見 生中継(ニコニコ生放送)