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2015年センター試験の生物科目を見たら、時代が変わっていた

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週末はセンター試験が開催されました。生物系のサイエンスライターだし、せっかくなので生物科目の問題を解いてみることにしました。果たしてサイエンスライターと名乗るにふさわしい点数を獲得することができるのか!?(3年連続使っている文章のコピペ)

理科科目は新課程により大幅変更

その前に、今年のセンター試験の理科科目について紹介します。今年は、新学習指導要領(新課程)が導入されてから初めてのセンター試験となります。そのため、理科科目が大幅に変更されています。

旧課程では「生物I・II」となっていた科目は、新課程では「生物基礎」と「生物」と分割されました。これは物理・化学・地学でも同じです。

そして、理科の受験時間は二つに分かれています。一つは「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」から2科目を選び、60分で回答する「理科①」。もう一つは「物理」「化学」「生物」「地学」から1科目を選び60分で回答、または2科目を選び120分で回答する「理科②」です。

どのような組み合わせで受験するかは、次の4パターンからしか選べないことになっています。「理科①から2科目」「理科②から1科目」「理科①から2科目および理科②から1科目」「理科②から2科目」です。

どのパターンで受験するかは、志望校によって変わります。国立大学の場合、文系学部では「理科①から2科目」、理系学部では「理科②から2科目」の成績を採用するところがほとんどのようです。旧課程では、文系学部は1科目、理系学部は2科目で成績のいいほうというところが多かったため、かなり理科のウェイトが大きくなっています。

以上が新課程における変更点です。これを踏まえ、このブログでは「生物基礎」を30分、「生物」を60分で回答するとしました。

「生物基礎」でゲノム問題!

「生物基礎」の僕の成績は50点満点で35点。臓器の機能といった暗記ものや、バイオーム(生物群生のこと、僕の時代には出てこなかった単語)で不正解が多かったです。

むしろ驚いたのは、ゲノムをテーマにした問題が3問も出たことです(第1問B)。DNA抽出実験に向かないサンプルは何か(ニワトリの卵白にはDNAは含まれていない)、異なる細胞におけるゲノム配列や遺伝子発現など、最近の生命科学のニュースをちらつかせるものとなっています。

極めつけは3問目の計算問題です。問題は意訳すると、次のようになります。

「ヒトのゲノムは30億塩基対からなっている。アミノ酸をコードする翻訳領域は全体の1.5%と推定されているので、ヒトのゲノム中の個々の遺伝子の翻訳領域は平均して約(A)塩基対だと考えられる。また、ゲノム中では平均して約(B)塩基対ごとに一つの遺伝子(翻訳領域)があることになる。ゲノム上では遺伝子として機能する部分はとびとびにしか存在していない」

この問題は、予備校による分析でも難問としています。なぜなら「ヒトの遺伝子の総数は約22000個」ということを知っていないと解けません。計算は次のようになります。

(A)全翻訳領域は、30億塩基対 x 1.5% = 4500万塩基対。遺伝子は22000個なので、遺伝子1個あたりの平均翻訳領域は、4500万塩基対 / 22000個 = 2000塩基対

(b)ゲノムは30億塩基対。遺伝子は22000個なので、30億塩基対 / 22000個 = 15万塩基対

ただし問題文や(A)にあるように、1個の遺伝子が15万塩基対からできているのではないことに注意。

僕が受験した2000年はヒトゲノム計画の真っ最中で「ヒトの遺伝子の総数は約10万個」と見積もられていたころですから、時代が変わったと感じずにはいられませんでした。

「生物」で最近の実験手法が登場

「生物」の僕の成績は、100点満点の78点。こちらも暗記もので不正解が多かったです。古生代の植物群なんて覚えていない……。

そしてこちらも、遺伝や遺伝子に関する問題が目立ちました。ラクトースオペロン、大腸菌のDNA複製スピード、前後軸形成に関わるbicoid遺伝子、臓器移植の拒絶反応防止のための遺伝子改変、系統樹作成のためのPCR+制限酵素処理+電気泳動など……。去年までなら見たことないような単語が多く見られました。僕の場合、オペロンや電気泳動は大学2年の学科の授業で初めて知ったので、こちらもかなり時代が変わったようです。

ただ、大まかな傾向はさほど変わっていませんでした。知識を問うものと、実験結果から考察するものと、バランスよく混ざっていました。ただ、細かい知識が要求されたり、正確なグラフの読み取り方を求められたりと、差が付きやすそうな問題でした(第4問の問2はなんと対数グラフ!)。

こちらで興味深かったのは、選択問題である第6問。ブタを使った臓器移植ですが、拒絶反応を防ぐためのかなり具体的な手法が問われました。その中の手法の一つが「『臓器を移植される人から得た細胞』を、遺伝子的に特定の臓器を欠損したブタの胚盤胞に注入することで、拒絶反応を起こさない細胞でできた臓器をもつブタを作出する」というもの。そこで「臓器を移植される人から得た細胞」とは具体的に何かというもの。選択肢は次の8個。

B細胞、ES細胞、iPS細胞、T細胞、樹状細胞、卵母細胞、未受精卵、受精卵

答えは「iPS細胞」。患者から作ったiPS細胞をブタの初期胚に注入すれば、患者iPS細胞由来の臓器ができるので、拒絶反応は起きないという理屈です。現実にはまだまだですが、こちらも「基礎生物」のゲノム問題と同じ、トレンドを押さえた問題といえます。

最近のトレンドを押さえる必要があるかもしれない

去年はこのブログで「今後は全体的に実験問題にシフトしていくかもしれない」と書きました。新課程でも、もちろん実験問題が残っています。しかし、それ以上に衝撃的だったのはゲノム、遺伝子、iPS細胞など、最近の話題に絡んだ問題が目立ったことです。

遺伝子に代表される生命科学は、ここ数年で劇的に変化しています。教科書に書かれている古典的な知識や実験手法はもちろん大切ですが、最近のトレンドも押さえておく必要が出てくるのかもしれません。

国語や英語ではSNSや市民科学といった、最近の話題に関連した文章問題が出ましたが、生物でも似たようなことが起きそうな雰囲気があります。例えば、アンジェリーナ・ジョリーの遺伝学的検査をベースにした問題もありえる、ということです。今後、どのような問題が出るのか、注目していく価値があると考えています。

 

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