• HOME
  • life science
  • アップルのメディカルツール「ResearchKit」こそが世界を変える

アップルのメディカルツール「ResearchKit」こそが世界を変える

life science

月曜日の夜中にアップルの製品発表会がありました。12インチRetina MacBookやApple Watchの発表もありましたが、個人的におもしろそうと思ったのは、医療関係者向けのメディカルツール「ResearchKit」です。もしかしたら、診断や疫学調査のスタイルを変え、Retina MacBookやApple Watch以上に世界を変えるかもしれません。

ResearchKit紹介Webページより

患者のデータをiPhone経由で簡単に収集する

メディカルツール「ResearchKit」は、医療関係者や研究者が、患者のデータをiPhone経由で簡単に収集するためのものです。オープンソースのため自由にカスタマイズでき、自分の研究に合わせたアプリなどを制作できます。

通常、病気の診断は、病院や大学といった研究機関に患者が足を運ばなくてはいけません。患者によっては毎日通院というわけにはいかず、3ヶ月に1回といった不連続なデータとなっています。また、問診時に患者に答えてもらった手書きのアンケートやカルテは膨大な紙の書類となり、データ処理に時間がかかります(これはコンピュータで何とかなるかもしれませんが)。

また、統計的なデータがほしいときには、どれだけの被験者を集められるかが鍵となります。患者だけでなく、健常者も集めようとしても、現実にはなかなか協力者は集まりません。また被験者にとっても、わざわざ研究機関に行ってテストを受けるというのは面倒です。

こういった医療研究におけるデータの少なさ、煩雑さ、面倒を無くすのがResearchKitです。ResearchKitは、iPhoneに専用アプリをインストールして使ってもらうことで、患者や被験者のデータをiPhone経由で研究機関に送信するというものです。

Apple Press Info – Apple、医学研究活動の革新と研究者をサポートするツール、ResearchKitを発表

患者がアプリで使ったデータを研究機関に送信

発表会の映像では、パーキンソン病という神経変性疾患の診断のため、どれくらいの時間で声を出し続けることができるか、指先で交互にiPhoneの画面を何回タップできるかなどをテストする画面がありました。

ResearchKit紹介Webページの映像より

また、喘息患者向けには、現在のPM2.5の値などを知らせる画面が表示されます。これは診断よりも、自己管理機能と言えます。

ResearchKit紹介Webページより

他にも発足時には、乳がん、糖尿病、心疾患のアプリが提供されます。アプリへのリンクがありますが、現時点では日本で使うことはできません。

ユーザーが同意するという条件で、アプリで使ったデータを研究機関に送信して研究に役立てることも可能です。研究機関は、得られたデータを研究目的のために活用したり、個別に診断に使ったりすることが可能です。なお、これらのデータをアップルが監視することはないとしています。

これまで、病気の研究や患者の指導では、限られた地域の限られた人にしか対象にできませんでした。これからは極端な話、世界中の人を対象にできるということです。データの収集頻度も、これまでの3ヶ月に1回から、毎日どころか毎秒レベルのものとなります。得られるデータは、今までとは比べものにならないほどの量になるのは間違いないでしょう。

一般ユーザーが気軽に研究に参加できる

今のところは患者向けという位置付けですが、もし一般ユーザーでも使えるようなアプリになれば、大きく化ける可能性があります。研究機関が作成したアプリとなれば、安心して使えるという信頼感は大きいので、ヘルスケアカテゴリのキラーアプリになるかもしれません。

また、将来病気になるリスクを評価する疫学調査にも使えます。疫学調査では対象者の追跡やアンケートが大変ですが、この手間が大きく減るかもしれません(Androidなどに浮気しないという条件付きですが)。

そうなれば、一般ユーザーがiPhoneから自分のデータを送信して、気軽に研究に参加することも可能です。現在、個人の体質などに合わせた医療を提供する「個別化医療(オーダーメイド医療)」に向けた研究が盛んに行われていますが、これに一役買うかもしれません。

ResearchKitこそが世界を変える

ResearchKitが研究機関で普及し、アプリがブレイクすれば、今までの診療や疫学調査のスタイルががらりと変わるかもしれません。対面診断がゼロになるとは思えませんが、かなりの手間が省かれ、被験者と研究者双方がより有益な時間を過ごせるようになるでしょう。

アプリからの情報が世界中から集まれば、新しい知見が得られる機会も多くなります。その情報を世界中のユーザーに還元すれば、多くの人がより健康に過ごせるようになるでしょう。まさに、世界を変える可能性を秘めています。

もちろん、一筋縄でいくとは思えません。ユーザーがどこまで正直にアプリを操作してくれるか、データ管理は適切に行われるのか、得られたデータは信頼できるものとして論文などで発表できるのか。乗り越える課題は多くありますが、世界を変えるメディカルツールとして、医療関係者や研究者には前向きに取り組んでいただきたいです。

 

  • この記事についてもっと知るためのおすすめ図書