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宇宙飛行士の双子実験の結果は公開されない? 遺伝子プライバシーが投げかける問題

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3月28日、宇宙飛行士3人が国際宇宙ステーション(ISS)に向かいました。このうち、アメリカの宇宙飛行士スコット・ケリーには、宇宙飛行士を引退した一卵性双生児の兄マーク・ケリーがいます。今回は、ISSにいる弟と、地球にいる兄とを比較するという実験も行われます。遺伝子の機能も比較する予定ですが、この遺伝子比較実験の結果は公開されないかもしれません。なぜなのでしょうか。

画像はNature Newsより。説明文は「ヒゲに騙されないでほしい。NASAの宇宙飛行士スコット・ケリー(左)と兄のマークは一卵性双生児」

ISS長期滞在が人体に与える影響を一卵性双生児で比較する

今回の記事は、Nature Newsに掲載されたものを参考にしています。

Astronaut twins study raises questions about genetic privacy(遺伝子プライバシーの問題を投げかける宇宙飛行士の双子実験)

http://www.nature.com/news/astronaut-twins-study-raises-questions-about-genetic-privacy-1.17199

ISSでは無重力であり、さらに地球にいるよりもはるかに多くの宇宙放射線を浴びます。これらが人体に与える影響については、今までも研究されてきました。しかし今回は、遺伝情報が同じ一卵性双生児で比較することで、より精確な情報が得られると期待されています。

今回ISSに1年間滞在するスコットは、過去にも180日間宇宙に滞在しており、合計で約540日間宇宙に滞在する予定です。兄のマークは、すでに現役を引退していますが、2011年までに4回宇宙に行っており、合計の滞在期間は54日。10倍くらいの差があります。

遺伝子の機能がどう変化するかに注目が集まっている

調べるのは、遺伝子、免疫、心血管機能、脳機能、腸内細菌など、多岐に渡ります。そのなかでも特に、遺伝子の機能がどう変化するかに注目が集まっています。もし、遺伝子の機能と人体への影響との因果関係がわかれば、来たる宇宙長時間滞在や火星有人探査への対策につながるからです。

この実験には150万ドル(およそ1億8000万円)が使われる予定です。ところが、遺伝子の機能の変化については公開されないかもしれないとNature Newsが報じています。

遺伝子には重篤な病気と関係するものが多い

どのような変化が起きるのか全く予想できないため、実験では全遺伝子の昨日の変化を、ISSの滞在前後で調べます。ところが、遺伝子のなかにはアルツハイマー病やパーキンソン病など、重篤な病気と関係するものが多くあります。そのため、もし、本人たちが遺伝情報の公開を拒否すれば、そのデータが日の目を見ることはありません。

実際のところ、本人たちがどう考えているのか、現時点では不明です。Nature Newsによると、そもそもこの実験を思いついたのが本人たちであり、兄弟とも遺伝カウンセリングを受けているとのこと。少なくとも、実験そのものには前向きなようすが伺えます。

遺伝子プライバシーの問題

宇宙飛行士が発見した成果は、未来のためにも広く知られるべきでしょう。しかし、遺伝情報はその人しかもたない個人情報でもあるため、すべてを無条件に公開するわけにはいかないというのも理解できます。これが、Nature Newsのタイトルにある「questions about genetic privacy(遺伝子プライバシーの問題)」です。

NASA内では実験データが保管されると思いますが、人類史的にも貴重なデータを一組織が独占するというのも奇妙な話です。重篤な病気に関係するところだけは非公開にするなど、本人にも社会にも配慮されるようなかたちで公開されるのが望ましいと考えます(DNA二重らせんモデルの提唱者の一人であるジェームズ・ワトソンは、自分の全塩基配列をウェブ上に公開するときに、アルツハイマー病と関係する遺伝子の部分だけを削除しました)。

 

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