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細胞を実感できる日本科学未来館の新展示「細胞たち研究開発中」

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日本科学未来館では、3月20日から新しい展示「細胞たち研究開発中」が始まりました。この展示のブロガー向け見学説明会に参加してきました。新しい展示で紹介していること、その狙い、僕が感じたことなどをお知らせします。

3つのパートに分かれる展示

新しい展示は、主に3つのパートに分かれています。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った治療などをストーリー方式で紹介するミニシアター「5つのiPSストーリー」。再生医療、生物の形作りなどを紹介する「細胞の展示」。生命倫理に関わる問題に対して、来館者の意見を集めて表示する「オピニオン・バンク」。今回体験できたのは「5つのiPSストーリー」と「細胞の展示」なので、この2つを主に紹介します。

iPS細胞の研究に関わる5つの物語

「5つのiPSストーリー」では、iPS細胞の研究に関わる物語が流れます。入り口は5つあり、順番に並んで空いたシアターに入ります。どのストーリーが見られるかは場所によって決まっており、シアターに入ってからストーリーを選ぶことはできません。ただ、どのストーリーも興味深いものとなっています。

一部屋ずつ分かれている外観は、まさに細胞のよう。

中はイスが2つで定員は4名。そのため、混雑時には待ち時間が発生することも(日中は最大30分待ち)。

僕が見たのは、老夫婦が自分のiPS細胞から生殖細胞(精子と卵子)を作って子どもを生もうと考えるストーリー。現在でもiPS細胞から生殖細胞を作ろうという研究はありますが、それがどのような研究なのか、どのような未来をもたらすのかを紹介します。

シンプルなイラストとすんなりくる会話で、思わず食い入ってしまいます。

現在では、iPS細胞由来の生殖細胞から受精卵を作ることは禁止されています。禁止されている理由、可能だったとして浮かび上がる問題、iPS細胞以外で子どもを作る方法(そして、そもそも子どもを作らないという選択肢)などを提示します。

この記事では載せませんが、最後に質問に答えます。このストーリーはセンシティブなので意見が分かれるかもしれません。

他の4つのストーリーがどのように流れるのかわかりませんが、小学生以上であれば親子でも楽しめるものだと感じました。

広がる細胞の世界

シアターを抜けると、細胞の展示が広がります。なお、シアターを見なくても、こちらの展示は出入りが自由。混雑時にはこちらから見ても問題ありません。

シアターから出てすぐには、3種類の幹細胞を実物で比較できます。3種類の幹細胞とは、私たちの体内にある「体性幹細胞」、受精卵から取り出して作製できる「胚性幹細胞(ES細胞)」、私たちの皮膚や血液から遺伝子に作用させて作製できる「iPS細胞」です。どのように外見や性質が違うのかは、ぜひ実際に見て確認してください。

幹細胞の研究の歴史。ピンクの部分は今月になってから動きがあったもの。このように、新しいトピックが発表されるたびに追加される予定。

視点を展示エリアの左側に移すと、ヒト受精卵の細胞分裂する動画が目に入ります。写真では見たことがあっても、動画で見ることはあまりないため、素直に感動します。

どのようにして体が作られていくのか、そのプロセスを主要器官にフォーカスして見ることができます。

お腹のなかの赤ちゃんはどれくらいの大きさなのか、実物大の大きさに型抜きしたものに触れることもできます。上の写真は生まれたて(受精38週間後)。さかのぼって受精4週間後くらいはというと。

ちっちゃ! 受精後19日には触ってやっとわかるという程度です。案内をしてくれた科学コミュニケーターいわく、ここで親子の対話が生まれるとのことです。

次は細胞のなかを知る展示。細胞内にある主な10種類の構造物をイラストで紹介します。一般的に細胞のイラストはカラフルですが、それは見やすくするための色分けに過ぎません。今回は「細胞は透明である」ということを知ってもらうため、あえて白黒のイラストにしています。

他にも細胞間の連携によって視覚情報を伝える方法や、細胞内にあるゲノムなどを紹介する展示もあります。

展示の本質は「細胞を実感する」

企画した科学コミュニケーターがキーワードとしていたのが「実感」です。「iPS細胞をきっかけに、現在進行形の細胞の研究を幅広く知り、未来に訪れる細胞との付き合い方を自分事として考える」ことを目的に、新展示は企画されました。

iPS細胞や受精卵の細胞分裂など、ニュースや教科書などで見聞きして知識として知っていても、それを「実感」することは滅多にありません。ところが、実際にiPS細胞などを見たり、赤ちゃんの大きさに触れたりすると、一気に「実感」できました。

入り口はiPS細胞を巡るシアターですが、この展示の本質は「細胞を実感する」ことであると感じました。そういう意味では、先に細胞の展示を見て「細胞を実感」してからシアターを見るほうが、より未来を「実感」できるところにおもしろさを感じました。

その代わり、展示に書かれている情報量は最低限となっています。人によっては「実感できたからこそ、もっと知りたい」と思うかもしれません。そのときには、科学コミュニケーターやボランティアにぜひ尋ねてみましょう。知りたいこともそれ以上のことも、いくらでも話してくれます。

生物に興味がある人はもちろんのこと、細胞をあまり意識したことがない人でも「細胞を実感できる」のが、日本科学未来館の新しい展示「細胞たち研究開発中」です。目まぐるしく変化する細胞研究の現場を垣間見ることができる、貴重な場となっています。

展示の仕切りは木目調。初めて顕微鏡で見られた細胞がコルク(コルクガシの樹皮を加工したもの)だったことに由来します。

細胞たち研究開発中 -生命-[常設展示 世界をさぐる] | 日本科学未来館 (Miraikan)

 

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