• HOME
  • my genome
  • 漫画の神様のヒミツを遺伝子から紐解くジェネシスヘルスケアの「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」(2)遺伝子との付き合い方

漫画の神様のヒミツを遺伝子から紐解くジェネシスヘルスケアの「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」(2)遺伝子との付き合い方

my genome

遺伝子解析サービス「GeneLife(ジーンライフ)」を手がけるジェネシスヘルスケアが7月に発表した「手塚治虫遺伝子解析プロジェクト」。漫画の神様と言われる故・手塚治虫が愛用していたベレー帽に付着していた髪の毛から遺伝子を調べるというものです。解析結果がウェブで公開されたので、所見を述べます。

手塚治虫遺伝子解析プロジェクトより

手塚治虫の記憶力は?

結果はこちらに公開されています。

マンガの神様、手塚治虫先生の遺伝子解析結果大公開!!

いろいろありますが、ここでは記憶力に注目してみましょう。

手塚治虫は、どのページにどんなセリフや背景を描いたのか、本棚のどこにどんな資料があるのがすぐに思い出せるほど、驚異的な記憶力の持ち主だったようです。

では、記憶力に関する遺伝子はどうだったのか。ジェネシスヘルスケアの解析によると、見事に「高い傾向」と出たようです。

これだけでは何の遺伝子を調べたのかわかりませんが、一部の項目については「エピソード」のページで詳しく紹介しています。このエピソードを読むだけでも、けっこうおもしろいものがあります。このページによると、記憶力についてはWWC1(KIBRA)遺伝子を見ているようです。

ただ、全部の項目について、調べた遺伝子名を掲載していないのは不満です。題材としては非常にとっつきやすいので、できるだけ具体的な名称を出すことで胡散臭さを払拭してもらいたいものです。

僕の記憶力は?

さて、そうなると「自分はどうなのか?」というのが自然に生まれる疑問です。記憶力については、僕が前回紹介した「GeneLife GENESIS(ジーンライフ・ジェネシス)」でも扱っているので、さっそく見てみましょう。

これによると、僕の記憶力は「やや高い」という中間です。そりゃあ、天才におよぶわけがないよなあ、と思ってしまうのですが……。

天才のすべてを遺伝子で説明できるわけではない

もう少し詳しいデータは次になります。

たしかにWWC1(KIBRA)遺伝子を見ています。スニップ(一塩基置換という遺伝子の個人差のひとつ)でTTだと「記憶力が高い」、TCだと「記憶力がやや高い」、CCだと「記憶力は普通」となるようです。

気になるのは、人口頻度です。記憶力が高いとされるTTは、日本人では68パーセントもいるようです。だとすると、手塚治虫のKIBRA遺伝子のスニップがTTだからといって、これだけで彼の天才的記憶力を説明することはできないでしょう(もしイコールなら、日本人の68パーセントは手塚治虫並の記憶力をもつはず)。

つまり、遺伝子を見ることで、もしかしたら天才の一端を垣間見ることはできるのかもしれませんが、遺伝子だけで全部を説明できるわけではない、ということです。

数十年後に研究が大きく進んで、記憶に関わる遺伝子を丸ごと調べれば、ある程度は精度よく予測できるのかもしれません。ただ、記憶に関わる遺伝子がすべて明らかになっていない現状では不可能です。そういうものだと理解するにはちょうどいい題材なのかもしれません。

ちなみに、記憶力で根拠としている論文はこちらです。スイスとアメリカの追跡調査をベースにしているので、日本人にそのまま適応できるかは判断が難しいところです。

Papassotiropoulos A, et al. (2006) Common Kibra alleles are associated with human memory performance. Science 314 (5798): pp. 475-478.

病気に関することはオープンにすべきではない?

今回のプロジェクトで公開されたものは、他にも「計算速度」や「調和性」など、性格に関することがほとんどです。最近の遺伝子解析サービスはヘルスケアとの連携を目指して、がんなどの病気の発症リスクを知ることをアピールするものが多いのですが、病気に関することは掲載されていません。

病気に関することは、生存している遺族にも影響することなので、むやみに公開しないというジェネシスヘルスケアの姿勢があると思われます。そもそも、病気に関わるものは調べていないと、発表イベントのときに発言していました。

これは、今後より身近になってくるであろう遺伝子解析との付き合い方を考えるうえで重要になります。性格といったものはエンターテインメント要素の強いものとして、もしかしたら積極的に公開しながら活用できるのかもしれません(血液型占いも、当たるかどうかは別として、医学的にそこそこ重要な情報で遊んでいるところがあるので)。

ただ、病気に関することは受け止め方が人によって大きく変わってくるでしょうし、精神的な負担も大きくなりがちです。そのことについても、手塚治虫遺伝子解析プロジェクトのページのどこかに記載してもらいたいです。これから遺伝子とどう付き合えばいいのか、ページを見た人にとって貴重なヒントになると思います。

遺伝子解析サービスに関することはmy genomeタグにまとめてあります。ぜひご覧ください。

 

  • この記事についてもっと知るためのおすすめ図書