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イギリスでヒト受精卵へのゲノム編集を申請、国はどう判断するか

genome editing

今年の4月に、中国の研究グループがヒト受精卵の遺伝子を改変したとして大きな話題となりました。ここ数年で登場した「ゲノム編集」という精度の高い遺伝子改変技術は動植物で多く使われていますが、ヒトの生殖細胞や受精卵についてどうするかは、世界中で早急にルール作りが必要だとされています。そんな中、今度はイギリスの研究グループが、ヒト受精卵へのゲノム編集実験を行いたいと申請しました。どのような判断が下されるのか注目されます。

フランシス・クリック研究所のステートメント(9月18日付)

不妊になる理由を遺伝子から調べる

申請したのは、イギリスのフランシス・クリック研究所のKathy Niakan博士。専門は、受精卵から体がどのように作られていくのかを研究する発生学で、ヒトの初期の発生における遺伝子の機能などに注目して研究を行っています。

フランシス・クリック研究所の研究者紹介ページ

イギリスでは1990年にヒト受精・胚研究法が制定され、ヒトの受精卵の取り扱いについては「Human Fertilisation and Embryology Authority(ヒト受精・胚機構)」という国の専門組織が実際の規制を行っています。

中国の場合は遺伝病の治療を目的としていましたが、Niakan博士の場合はさらに基礎研究寄りです。受精から着床までの間に、受精卵でどのような遺伝子がどのように関わっているのか。それを調べるために、ヒト受精卵でゲノム編集したいとのことです。この研究で得られる知見は、将来的には不妊治療への手がかりになりうるとしています。

ステートメントを見る限りでは、ゲノム編集で直接不妊を治療するのではなく、あくまでも不妊になる理由を遺伝子の側面から調べるだけとしています。

規制には従う

Niakan博士はステートメントで「(ゲノム編集という)より精度の高い、より効率がいい手法によって、現在の他の方法よりも、必要とする受精卵の数は減り、より成功しやすくだろう」と述べています。

また、ヒト受精卵を使うときの規制には当然従うとも述べています。「受精卵は、体外受精で余ったもので、同意を受けた場合のみ提供していただき、研究目的のみで使う」(Niakan博士)

国に申請したのは世界初

中国の場合も、研究室がある大学の倫理審査委員会で承認を得てから実験を行いましたが、必ずしもオープンとは言えない状況でした。これに比べて、国の機関に申請したのは世界初ではないかと言われています。

イギリスでは、科学技術の利用については政府が深く議論して、先進的な技術も認可しうるのが特徴です。例えば、ミトコンドリア病を遺伝させないために、ミトコンドリアが正常な卵子に核を移植できる法律を今年の初めに作りました。

3人のDNAから胚作製、英が世界初の承認 遺伝性難病予防へ – AFP通信

申請先のヒト受精・発生学機構がいつ、どのような決定を下すのはわかりませんが、イギリス国内でかなり深い議論になるだろうと思われます。

なお、最近になって、幹細胞研究者・生命倫理研究者・法研究者が集まるHinxton Groupという国際団体が、ヒト受精卵にゲノム編集することは「基礎研究においては途方もない価値がある」という声明を出しています。ゲノム編集した子どもを産むための臨床研究や応用研究はハードルが高く、現時点では非現実的です。しかし基礎研究、例えば、生殖細胞がどのように作られ、受精卵がどのように体を作るのか、あるいは受精卵へのゲノム編集の成功率はどうか、といったことに限っては容認してもいいのではないか、という動きが広まっています。

Statement on Genome Editing Technologies and Human Germline Genetic Modification – Hinxton Group(PDF)

ゲノム編集に関することはgenome editingタグにまとめてあります。ぜひご覧ください。

 

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